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トップメッセージ

2026年9月
三和ホールディングス株式会社
代表取締役社長 執行役員社長

髙山 靖司

2026年4月に創立70周年を迎えて

ODCのディストリビューターミーティング

創立70周年という節目を迎えられたのは、ひとえに当社を支えてくれたステークホルダーの皆様のおかげであり、感謝の気持ちしかありません。取引先さまからは大変励みになる祝辞を多数いただきましたが、中でも近年の事業成長やグローバル化の進展に対してお褒めの声をいただいたことが印象的でした。
先日、今年で105周年を迎える米国ODCのディストリビューター(代理店)ミーティングがサンディエゴで開催され、久しぶりに参加しました。100年以上にわたって重要な顧客であり、パートナーとしてエンゲージメントを築いてきた方々と直接お会いし、70周年を迎えたお礼を申し上げることができました。皆様と交流を深めるにつれて、ステークホルダーのご期待をひしひしと感じ、当社がさらに長く、着実に歩み続けられるよう、気を引き締めて経営にあたらねばと気持ちを新たにしています。

長きにわたり事業を継続できた要因

ここまで事業を継続してこられた理由をあらためて考えると、シャッターという商品の特性にあるのではないか――つまり、建物や生活の中に溶け込み、決して派手な技術ではないものの常に必要とされてきた普遍的な価値が、根底にあると感じます。一方で、もちろんそれだけでは当社自身が長く存続できた理由にはなりません。製品の品質や安全性はもちろん、取付・メンテナンスまで自ら責任を持って行うことへのこだわり、多様なニーズへの対応力など、当社ならではの取り組みが評価されてきたことの結果であると自負しています。つくって売るだけでなく、開発・製造・設計・販売から取付・メンテナンスまでを行う独自のビジネスモデルは、他社が簡単には真似できない参入障壁となり、当社のシェアの高さにつながっています。また商品そのものの差別化のみを追求するのではなく、防犯・防災の機能としての安全性や開閉動作としての安全性など、これまで積み上げてきたノウハウや経験が当社ならではの価値につながるのです。また、自らつくった商品を自ら取り付け、メンテナンスまで行うことは当社の強いこだわりであり、これが一体となって品質や安全性を高める要因となっています。
さらに社歴を紐解くと、業界に先駆けた海外への進出も持続的成長を支える大きな転機になりました。最初のきっかけは、1974年のオーバーヘッドドア社(米国)との技術提携にさかのぼります。それを機に、米国市場の状況や提携先の特徴、当社との相性などをしっかりと調査したうえで1996年に同社を買収し、本格的なグローバル展開に踏み切ったわけです。当時の日本経済はバブルがはじけた混乱期にあり、当社の経営も苦しかったと聞いています。そんなさなかに、当時の経営陣が英断を下した理由として、永続的に大きな成長は望めない日本市場だけで事業を続けていくことへの危機感があったことは明白だと思います。ただ私は、危機感だけではなかなか勇気を持って踏み出せないのではないか、とも想像しています。むしろ、限界突破して世界を見てみたい、世界に挑戦してみたいという純粋な好奇心やチャレンジ精神のような気持ちの方が強かったのではないでしょうか。そのおかげで、当社のグローバル展開は今や日・米・欧・アジアの4極体制となり、成長を牽引する軸となっています。

「三和グローバルビジョン2030」について

2022年度にスタートした長期経営ビジョン「三和グローバルビジョン2030」は、国内市場の成熟化や人手不足、自然災害の激甚化を含む気候変動問題の深刻化、デジタル化の進展など、事業環境が大きく変わろうとしている中で、「われわれはどこを目指すべきか」という指針を社内外に示したものです。特に、社会構造の変化に伴い、インフラや技術の高度化が進み、顧客から当社商品へのニーズも高度化・複雑化する中で、私たちが提供する価値についても進化させることが不可欠となっていることを意識しました。
「To be a Global Leader of Smart Entrance Solutions~高機能開口部のグローバルリーダーへ」を目指す姿として掲げましたが、私が最も重視しているのは「Solutions」の部分です。これまでのように商品を販売して取り付け、点検・修理をするだけではなく、そこに付加価値や新たな機能をつけることでより高度な解決策(ソリューション)を提供し、それをグローバルに展開していく方向性をより明確に打ち出しました。以前はビジョンとして「グローバル・メジャー」という言葉を使ってきましたが、現ビジョンではあるべき姿を一歩進めて「業界の中でソリューションをリードする存在でありたい」という想いがあり、「グローバルリーダー」という言葉へと変更しました。ソリューションを強化していくうえでは、取付工事やメンテナンスを通じて、顧客と直接接点を持っていることが当社の最大のアドバンテージとなります。いかに顧客の抱える困りごとや課題から需要を掘り起こし、取引先や多様なパートナーとの連携、最新技術の活用などによりソリューションを創出していけるかがポイントになるでしょう。現在推進中の中期経営計画では、「防災・環境対応製品とスマート化製品・サービスによる事業拡大」を基本戦略のひとつに掲げていますが、ビジョン実現に向けて最も象徴的な戦略テーマと位置づけています。
一方、「変わらないものは何か」も重要な指針ですが、シャッターなど開口部商品を中心に据えたビジネスそのものを変えるつもりはありません。これは決して祖業に対する想いといった精神論ではなく、収益性に優れたビジネスモデルが確立されているからという極めて合理的な理由です。もちろん、永遠に保証されているわけではありませんが、この収益の柱を大事に守り、進化させ、高いシェアを維持しながら、ここを起点に周辺領域への拡充や、グローバルな展開エリアの拡大にもチャレンジを続けていきます。
「三和グローバルビジョン2030」をスタートしてからの4年間を振り返ると、足元の業績はさまざまな外部要因が重なり苦戦しているものの、前中計期間(2022~2024年度)で米国事業を大きく伸ばせたことや、設備投資・IT投資も計画どおりに進んでいること、注力する防災・環境対応製品などが順調に拡大していることには手応えを感じており、事業基盤の構築においては一定の成果があったと認識しています。一方、ROIC経営を標ぼうする当社にとって、欧州事業の収益性改善やアジア事業における利益ある成長は今後の課題です。ただ、地域分散効果はもちろん、市場ごとのライフサイクルマネジメントは持続的成長に向けて重要なポイントです。今後も、アジア事業の強化だけでなく、その他の未展開の地域への拡大も目指していく考えです。安全・安心・快適な製品やソリューションを世界中に展開していくことは当社の使命であり、そういう気持ちで世界を見ています。

「中期経営計画2027」初年度の進捗

2026年3月期よりスタートした「中期経営計画2027」(以下、本中計)は、「三和グローバルビジョン2030」の実現に向けた第2フェーズであり、前中計での「基盤の確立」から「基盤の強化・拡大」へとギアを上げるステージと位置づけています。もっとも、戦略の方向性は前中計から大きく変えてはいません。引き続き、ビジョンで掲げた5つの基本戦略に沿って取り組みを進めています。
その初年度である2026年3月期の業績は、好調であった前中計と比べると、さまざまな外部要因が重なり総じて軟調に推移しました。特に米州が関税の影響や金利の高止まりなどにより市場回復が遅れたほか、欧州についても中東情勢を含めて市場環境の不透明さが継続しており、海外事業が伸び悩みました。日本についても建設資材高騰および労働者不足を背景とする大型都市開発の工期遅れや長期化などの影響により、シャッターやドアといった主力製品の販売数量が減少しましたが、高付加価値商品であり、収益性の高い気候変動対応製品やメンテナンス・サービス事業の拡大に加え、価格転嫁が進んだことで利益率が大きく改善し、全体収益を下支えしたところは今後に向けてもプラスの材料と言えます。
一方、基本戦略の進捗に目を向けると、軟調な市場への対応に追われ、やや後手に回ってしまったところがあります。ただ、注力する防災・環境対応製品やスマート化製品・サービスの拡大のほか、生産能力増強およびデジタル化に向けた投資については順調に進んでいます。特に防災・環境対応製品については、工場などの職場環境改善という要望にマッチした提案により、クイックセーバーなどの製品が国内で大きく伸びており、まさにソリューション強化への道筋を示す象徴的な事例と言えるでしょう。また、環境負荷を低減する「GXスチール」を採用した重量ドアを発売するなど、脱炭素社会に向けた製品ラインアップの拡充にも取り組んでいます。加えて、新たに展開を始めた遠隔管理システムの展開などIoT化にも注力しています。シャッター等の動作状況を現場に出向かなくてもPC等で確認できるサービスとして、建物管理における人材不足解消に効果を発揮します。米州においても開口部周りのIT化を進めており、また自動ドアサービス会社Pasco Doors社の買収を実施し、サービス・施工体制の強化による収益源の多角化を進めています。今後もこういった提案を通じて、高付加価値製品の販売を伸ばしていくことが重要です。
また、アジア事業についてはまだ規模が小さく、何とか黒字を確保したという段階ですが、苦戦している華東事業(中国)の構造改革を進めるとともに、比較的順調な香港、台湾の成長、ASEANの販売エリア拡大などにも取り組んでいきます。いずれにしても、主戦場となる日・米・欧の市場が回復した時に、しっかりと需要を取り込めるように十分に体制を整えておく必要があります。今のうちに価格転嫁やコスト削減、サービス事業の拡大などにより収益構造の変革を進めると同時に、生産能力増強や生産性向上への投資にも力を入れていきます。また、たとえ市場回復の遅れが事業拡大に影響したとしても、本中計で掲げた営業利益率の目標は確実に達成できるようにこだわっていきたいと考えています。

中長期的な成長に向けた課題

「三和グローバルビジョン2030」の実現はもちろんのこと、さらにその先の持続的成長を目指すためには人的資本の強化が最大の課題であり、とりわけ質的な進化を図っていく必要があると認識しています。もちろん、当社のこれまでの価値創造を支えてきたのは人的資本であることは言うまでもありません。社員の真面目さや仕事に打ち込む姿勢、製品を愛する気持ちは当社にとって大きな強みであると誇りに感じています。ただ、「三和グローバルビジョン2030」で掲げるソリューション強化に向けては、柔軟で創造性豊かな発想も必要ではないかと感じます。シャッター中心のビジネス自体は変わらないと述べましたが、シャッターに求められるものやシャッターでできることは、ユーザーの抱える課題や技術の進歩とともに広がっていくでしょう。そこに商機を見出し、当社が世界へ踏み出した原動力でもあった好奇心と探究心を忘れず、これまでの発想や概念にとらわれることなく新たな機能や用途を提案していかなければなりませんし、売り方や売り先も柔軟に定義し直すことが必要になるかもしれません。
また、グローバル展開を進めるうえで、グローバル人材の育成・確保も急務です。今後、アジアや新興市場などの開拓を検討していくうえでは、グローバル人材の不足が決定的なボトルネックになりかねません。国内人材をいかに育てるかも重要ですが、海外子会社の人材にも目を向け、グループ間の人事交流などを通じて、グローバルに活躍できる能力やマインドを持つ人材の発掘や抜擢も検討すべき時期にきていると感じています。また、国内人口の減少に伴う人手不足対策はもちろんですが、生産性や付加価値向上に向けたデジタル化への対応も、グローバルで取り組むべき課題となっています。この点に関しては、本中計の基本戦略のひとつとして取り組んでおり、3年間で100億円のIT投資により、日・米・欧での業務プロセスの改善や生産性向上を進めています。
3年間で500億円の予算枠をとったM&Aの実現も、ハードルの高い戦略テーマだと考えています。当社のビジネスの特性として、設備などの投資効率が高いため、自然とキャッシュが潤沢になる優れた収益モデルです。豊富なキャッシュの有効活用が当社のROIC経営における最大のイシューであり、M&A戦略も重要なウェイトを占めています。ただ、M&Aそのものが目的化してしまうのは本意ではなく、状況に応じて株主還元のさらなる充実や社員への還元も含め、資金配分を柔軟に見直していく考えです。
持続的成長を土台から支えるガバナンス体制については、独立社外取締役が半数を占め、女性や外国籍の方も加わり、取締役会ではさまざまな目線から自由闊達に議論ができており、十分に実効性を備えていると感じています。取締役会における議題設定のあり方や課題認識の共有などを含め、議論の質や判断のスピードをさらに高めていくためにはどうすればよいかなど、常に検討を重ね、継続的にブラッシュアップしていくことが市場からも求められているのではないかと思っています。

ステークホルダーの皆さまへ

前述したとおり、創立70周年はあくまで通過点にすぎません。この先の80周年、そして100周年を見据えながら今やるべきことを進めていく必要があり、まずは「三和グローバルビジョン2030」で目指す姿を具体的に形にしていくことが、社長としての私の役割だと認識しています。そのために、規模の拡大だけでなく、利益性や資本効率にもこだわり、資本コストを意識した経営に常に目線を合わせてまいります。また、成長投資とのバランスを図りながら、配当や自己株式取得などを通じた株主還元の充実にも継続して取り組んでまいります。事業基盤を強化・拡大し、社会課題に向き合いながら、さらなる企業価値向上へとつなげていく心構えです。「高機能開口部のグローバルリーダー」として、これからの当社の成長する姿にご期待ください。今後ともご支援のほどよろしくお願いいたします。